磯辺巻きの味

餅作りに成功し、出来立てのホヤホヤを味見しましたが、何となく物足りないのは、やはりお餅は焼かないと風味が出ないからでしょう。甘党なら大福とか黄粉をまぶしたものなどを拵えるのでしょうが、辛党には磯部巻きが一番です。私が磯部巻きと呼ぶのは、こんがり焼いたお餅を焼き海苔で巻いたものです。七味唐辛子を加えた醤油に浸けてから巻くのでピリッと辛くて癖になります。毎年元旦にお雑煮を食べていましたが、お餅を全部雑煮に入れるのは残念だったので、一部は雑煮、一部は磯部巻き用にしていました。お腹と相談しなかがら、いくつ食べられるか計算して磯部巻きを楽しんでいました。子供の時から飲兵衛の味覚だったようです。甘いものはどちらかと言うと、常に苦手でした。

そういう好みなので、出来上がったお餅を如何に保存するかに頭を痛めました。冷凍用のビニール袋に入れて延ばすことにしましたが、問題は餅がこびりつくことです。それと乾燥が遅いですね。硬くなるのを首を長くして待っています。ビニールがちゃんと剥がれるか実験するのですが、その間アイデアが見つかりました。油を薄く塗っておけば、風味も損なわれずに餅がこびりつかなくなりそうです。この次は試すつもりですが、それまで毎日固まらないお餅の袋に触って状況を確かめることになりそうです。子供時代にした化学の実験と家庭科の調理を混ぜたような面白い一時を過ごしています。最悪の場合の解決策として、水を入れれば多分溶けてくるので剥がれると期待しています。

以前ベトナム人経営の食品店で、かなり年のいったオバサンがお餅を作って売っていました。何時でもある訳ではなく、注文するほうが確実でした。もち米をミキサーで砕いて作っていたのだと思います。時には米粒が感じられました。杵でゆっくり粘度を上げる日本のお餅とは違いました。焼いてもあまり膨らまないのが欠点と言えば欠点でしたが、慣れると結構美味しい代物でした。今は娘しか店にいないので買えなくなりました。手間のかかる仕事であることは確かです。ご隠居のオバサンは戦争中にベトナムにいた日本人と付き合いがあったのだろうと想像しています。そのオバサンが食品保存に使われるフィルムに油を塗って使っていたのを思い出したのです。

こうして見ると、人生常に勉強ですね。何時も学ぶことだらけです。さばのへしこ女史がもち米の粉を代用できると教えてくれなかったら、今年も餅無しの正月になっていた筈ですから。
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