マ・ドゥ・コカーニュ

昨年末、12月18日にマ・ドゥ・ドマ・ガサックに行って来ました。持ち主のヴェロニック・ギベール・ドゥ・ラ・ヴェシエールとは長い付き合いですが、新著のサイン会を企画していると知らせがあったからです。この葡萄園は当地でトップを争うワイン作りに成功しているので、同時にボトルを購入する機会でもありました。

手にした本に彼女が書き込んでくれた献辞は「貴女にインスピレーションを与えるためよ。料理って愛の物語なのだから。」でした。文字通りレシピの本なのですが、それ以上の何かが盛り込まれています。まず本に目を通し、レシピを試してから記事を書くのが普通かも知れませんが、古くからの知人としてこの幸せな農家にまつわるお祭りの雰囲気を思い出してみたくなりました。

彼女の料理には何時も感動させる何かがありました。旅行中に味見した物を再現して友人を喜ばせたり、訪問中の友人にインスピレーションを受けて自己流の民俗料理を作ってみたり様々でした。

得意は南フランスの風味を盛り込んだ料理だと思います。庭に生える薫り高いハーブをたっぷり入れた料理ほど清清しいものはありません。オリーブ油、ミント、バジリコ、タイムが匂ってきます。

アイルランドの別荘からスーツケースに魚介類を一杯詰めて持ち帰って友人を楽しませてくれたこともありました。出発前に茹でたカニとか海老に舌鼓を打ちながら、この気前の良さは極楽のものだと思ったことが記憶に残っています。

極楽と言いましたが、題名にはそれを示唆するものがあります。とりあえず題名の語呂合わせだけでも説明しておきたいと思います。フランス語ではmas(農家)とmât(マスト)は同音異義語です。マ・ドゥ・コカーニュとは賞品を吊るした滑りやすい高い棒のことで、祭りなどで競争して登り宝を手に入れます。要するに、頑張ってよじ登れば幸福が得られると言うことでしょうか。

それと比べて、pays de cocagne(コカーニュの国)と言う時は、とてつもなく美味しいものが有り余っている極楽のような国を指しているそうです。私の知ったドマ・ガサックは確かに「美味しいもの」の同義語でした。

このような思い出を噛み締めながら、近い内にレシピを試してみたいと思っています。
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