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ニコヨン風の日焼け

私が生まれる直前に新語として認められたニコヨンは、現在放送禁止用語に含まれていると知りました。記憶が定かでなかったのでインターネットで検索して調べた結果です。残念だと思います。歴史を担う言葉を社会が一体になって抹殺してしまうのは。240円の日給をもらい、ドカベンを食べながら生き延びた人々に、「貴方たちは存在しなかった」と言うのと同じことだからです。おまけに現在の派遣村の存在を思えば、歴史は繰り返すのですから。

私の父は、所謂「良家のお坊ちゃん」でした。1929年から35年に至る世界的経済恐慌で財産をなくしてから散々苦労しました。第二次世界大戦後の破壊から立ち直ろうとしていた日本の再建に必要なものに目をつけたのか、土木屋に変身し、一時期、土地の埋め立てを専門にしていました。自ら手を出すのではなく、ブローカーとして荒くれた労働者が屯するような事務所と関係し、上記のニコヨンを使いながら生計を立てるべく努力していた時期がありました。家族揃ってこよなく愛した秋田犬太郎は、まさにこのような事務所で苛められていたのを父が救ったのですが、我が家に引き取られてから天使のように従順になりました。これは大事なエピソードなので、本題から脱線することを覚悟した上で記します。この犬の精神状態から察する限りでは、彼の生きた環境がどんなものであったか想像出来ます。その日暮しの荒んだ人々の慰みになっていたのでしょう。叩かれたり、蹴られたり、落ち着く暇の無い日々だったと思います。

さて、ニコヨンの話しに戻ると、日焼けの仕方にニコヨン風土方焼けがあります。ノンビリ体中思う存分に綺麗に焦がすブリジット・バルドー風の焼き方と比べ、肉体労働者は選択の余地がありません。太陽との関係は共存であり、お洒落など目的になりません。ヨーロッパでは農業労働に携わることの多かったスペイン人をからかって、「スペイン人風の日焼け」とか言う習慣がありました。要するに腕とか顔、首は真っ黒。その他衣服に包まれた部分は真っ白という感じの焼き方です。

ニコヨンが禁句になったすると、スペイン風の焼き方と言うしかないですが、やっぱりニコヨンのほうがシックリするみたいです。今回のような戸外での船の修理中はまったくどうしようもありません。いくらクリーム塗っても、地中海の紫外線はジリジリ迫ってきます。おまけに5日続きで仕事すると、日射病にならないように注意するだけで精一杯です。絶え間なく肉体労働しながら肌の保護をするのも面倒です。仕事に夢中になっていると忘れます。帽子も風で吹き飛ばされ、次第にクリームも汗で流れ落ち、気が付くと斑なニコヨン焼けになっていました。

かつてのニコヨンとの違いは賃金無しということですが、実は自分でこのような仕事をすることによってかなりの節約をしたことになります。企業に任せると出費も大変だし、自分でやるほど丁寧ではありません。