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見送り

今日は奇妙な一日でした。永遠の旅に立つ友のお見送りに行ったのですが、なんと予定より早く儀式が始まってしまい、10分ほど前に着いていたのに儀式に参加したという気になれませんでした。家族が宗教を拒んだためか、こじんまりした小さな映画館のような室内で、棺がそそくさと火葬に送られる場面をスクリーンで見るだけという簡素さでした。その部屋は弔いに来た人々を全員収容できないほど小さかったため、ある意味では遅れて着いた人がいて良かったと言えるほどでした。

その友がわざとしたとしか思えません。常に粋で頓狂なところのある人でした。そんなに真面目腐った場で自分が主人公であるなんて耐えられなかったのでは・・・友人たちに肩苦しい思いをさせるなんて、彼には考えられないほど野暮ったいことに思えたでしょう。命取りになったけれど大好きだった煙草を吹かしながら、友にウィスキーでも勧めたかったのではないかと思います。

おかげで葬式らしい重苦しさも陰気さもない明るいホールで、友人間の会話が弾みました。久し振りに再会した友人の中には弟同様の友フィリップがいます。30年来の付き合いである彼には人一倍執着しています。彼も執行猶予の身だと思うと胸が痛みますが、膵臓癌の手術を受けてもうじき2年になります。亡くなった友はひょっとして身代わりになって逝ってしまったのかなとふと思いました。発病したのは去年でしたが、手術できない部分に広がっていた上に、化学療法に耐えられないほど肝臓にダメッジがあったそうです。フィリップのためなら努力を惜しまない人の一人でした。

葬式らしくない集まりになりましたが、唯一の否定できない徴は匂いでした。やはり風を伝って来る焦げ臭い匂いに命の儚さを感じずにはいられませんでした。ここまで読んで下さった読者の記憶にアウシュヴィッツの匂いを留めないために、そして友の安らかな永眠を祈るために、香り豊かな百合のブーケを掲載します。


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